遺言は「だれでも勝手に」できるわけではありません。法律で定められた条件と方式を満たした人のみが有効な遺言を作成できます。以下に、遺言をするための要件と注意点をわかりやすくまとめます。

✅ 遺言をするための条件(民法第960条〜)

1. 遺言能力(年齢・判断力)

  • 満15歳以上であれば、遺言をすることができます(民法第961条)。
  • 精神的に判断能力があることが必要です。
    • 認知症などで判断力が著しく低下している場合は、遺言が無効になる可能性があります。

2. 遺言の方式(法定方式)

遺言は、法律で定められた方式に従って作成しないと無効になります。

主な遺言の種類:

遺言の種類特徴
                自筆証書遺言本人が全文・日付・署名を手書きする。簡単だが形式不備に注意。
                公正証書遺言公証人が作成。証人2人が必要。確実性が高く、家庭裁判所の検認不要。
                秘密証書遺言内容を秘密にしたまま公証人に証明してもらう。手続きが複雑。

⚠️ 無効になるケース

  • 年齢が15歳未満
  • 遺言書の形式に不備がある(署名・日付がないなど)
  • 遺言能力がなかったと判断される(認知症など)
  • 強迫や詐欺によって作成された場合

📝 注意点

  • 遺言はいつでも書き直すことが可能です(最新の遺言が有効)。
  • 遺言書が複数ある場合は、内容が矛盾しないか確認が必要です。
  • 遺言執行者を指定しておくと、相続手続きがスムーズになります。

遺言には、法律で定められた方式がいくつかあり、それぞれに特徴とメリット・デメリットがあります。以下に代表的な遺言の種類をわかりやすくまとめますね。

📜 遺言の主な種類(普通方式)

遺言の種類特徴・ポイントメリットデメリット
     自筆証書遺言本人が全文・日付・署名を手書きする  手軽・費用がかからない書式不備で無効になることがある
     公正証書遺言公証人が作成し、証人2人の立会いが必要  法的に確実・家庭裁判所の検認不要費用がかかる・証人が必要
     秘密証書遺言内容を秘密にしたまま公証人に証明してもらう  内容を誰にも知られずに済む手続きが複雑・検認が必要

🆘 特別方式の遺言(緊急時用)

以下は、通常の方式が取れない特別な状況で認められる遺言です:

✅ 危急時遺言

  • 死亡の危険が迫っているときに、証人3人以上の前で口頭で遺言
  • 20日以内に家庭裁判所で確認されないと無効

✅ 船舶・隔絶地遺言

  • 船の中や交通が遮断された地域での遺言
  • 特定の証人や役人の立会いが必要

📝 実務上のポイント

  • 最も確実なのは公正証書遺言です。法的に無効になるリスクが低く、家庭裁判所の検認も不要。
  • 自筆証書遺言は法改正により、財産目録はパソコン作成でも可(ただし署名・押印は必要)。
  • 遺言書はいつでも書き直し可能。最新のものが有効になります。

自筆証書遺言は、本人がすべてを自筆で書く遺言書で、最も手軽に作成できる方式です。ただし、法律で定められた形式を守らないと無効になる可能性があるため、注意が必要です。

✍️ 自筆証書遺言の作成方法(民法第968条)

✅ 必須の要件

  1. 全文を自筆で書くこと
    • 財産目録はパソコンや通帳コピーでも可(2020年法改正)
  2. 日付を明記すること
    • 「令和5年10月8日」など、年月日を正確に記載
  3. 署名と押印
    • 本人の氏名を自筆で書き、印鑑(認印でも可)を押す

📄 書き方の例(構成)

コード

令和○年○月○日

私は、次のとおり遺言をする。

第1条 長男〇〇〇〇に、岡山市〇〇町の土地および建物を相続させる。
第2条 次男〇〇〇〇に、預金口座(〇〇銀行〇〇支店)をすべて相続させる。
第3条 遺言執行者として、長男〇〇〇〇を指定する。

氏名:〇〇〇〇
印:㊞

🧠 注意点

  • 誤字・脱字や曖昧な表現はトラブルのもとになります。
  • 財産の特定はできるだけ詳細に(銀行名・支店・口座番号、不動産の地番など)
  • 遺言執行者を指定すると、手続きがスムーズになります。
  • 家庭裁判所の検認が必要(公正証書遺言には不要)

📁 保管方法

  • 自宅保管でも可能ですが、紛失・改ざんのリスクあり
  • 2020年からは、法務局での保管制度(自筆証書遺言保管制度)が利用可能
    • 検認不要
    • 安全に保管され、相続人が簡単に確認できる

公正証書遺言は、公証人が作成する法的に最も確実な遺言書の方式です。家庭裁判所の検認が不要で、形式不備による無効のリスクがほぼないため、遺言者の意思を確実に残したい場合におすすめです。

🏛️ 公正証書遺言の作成手順

✅ 1. 遺言内容の準備

  • 誰に何を相続させるかを明確に決めておきます。
  • 財産の内容(不動産、預金、株式など)をリストアップし、できるだけ具体的に記載します。
  • 遺言執行者を指定するかどうかも検討します。

✅ 2. 必要書類の準備

  • 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
  • 財産に関する資料(登記簿謄本、通帳コピー、株式明細など)
  • 相続人の戸籍謄本(続柄確認のため)
  • 証人2人の氏名・住所・生年月日(※未成年者・推定相続人・受遺者は不可)

✅ 3. 公証人との事前打ち合わせ

  • 公証役場に連絡し、遺言内容の草案を提出します。
  • 公証人が内容を確認し、必要に応じて修正・助言を行います。

✅ 4. 公証役場での遺言作成

  • 遺言者本人が公証役場に出向き、証人2人の立会いのもとで遺言内容を確認・承認します。
  • 公証人が遺言書を作成し、本人と証人が署名・押印します。

✅ 5. 遺言書の保管

  • 原本は公証役場に保管され、本人には「正本」と「謄本」が交付されます。
  • 相続開始後、相続人は公証役場で遺言書の内容を確認できます。

💰 費用の目安(2025年現在)

財産額の目安手数料(概算)
                1,000万円未満               約11,000円
                1,000万〜3,000万円               約22,000円〜33,000円
                3,000万円以上               財産額に応じて加算

※証人の依頼費用(1人5,000円〜1万円程度)や出張費が別途かかる場合もあります。

📝 メリットと注意点

✅ メリット

  • 法的に確実で、無効になるリスクがほぼない
  • 家庭裁判所の検認が不要
  • 公証役場で原本が保管されるため、紛失・改ざんの心配がない

⚠️ 注意点

  • 証人2人の確保が必要
  • 公証人との事前打ち合わせに時間がかかることも
  • 費用がかかる(ただし安心料と考えれば妥当)

公正証書遺言は、家族間のトラブルを防ぎ、遺言者の意思を確実に実現するための最良の方法です。

秘密証書遺言は、遺言の内容を誰にも知られずに作成できる方式で、民法第970条に定められています。遺言者が内容を自分で作成し、封をしたうえで公証人に証明してもらうため、プライバシーを守りたい人に向いている遺言方法です。

🕵️‍♂️ 秘密証書遺言の特徴

項目内容
                  作成者         遺言者本人(内容は自筆でもパソコンでも可)
                  内容の秘密性         公証人や証人にも内容は知られない
                  公証人の関与         封印された遺言書を公証人が「本人の遺言書である」と証明
                  証人         2人以上の証人が必要(未成年・推定相続人は不可)
                  検認         相続開始後、家庭裁判所で検認が必要

✍️ 作成手順

① 遺言書を作成

  • 内容は自筆でもパソコンでもOK(署名は必ず自筆)
  • 日付・署名・押印を忘れずに
  • 封筒に入れて封印(開封されていないことが重要)

② 公証役場へ持参

  • 遺言者本人が公証役場に出向き、証人2人とともに手続き
  • 公証人が「これは本人の遺言書である」と証明書を作成

③ 保管

  • 遺言書は本人が持ち帰って保管(公証役場では保管しない)
  • 相続開始後、家庭裁判所で検認を受ける必要あり

✅ メリット

  • 内容を誰にも知られずに済む(公証人も読まない)
  • パソコンで作成できる(自筆証書遺言より柔軟)
  • 公証人が関与するため、形式不備のリスクが低い

⚠️ デメリット・注意点

  • 遺言書の内容に不備があっても、公証人はチェックしない
  • 検認が必要なので、相続手続きに時間がかかることも
  • 保管は自己責任(紛失・改ざんのリスクあり)

秘密証書遺言は、内容を知られたくないが法的な証明は残したい人に向いている方式です。ただし、内容の有効性は自分で確保する必要があるため、専門家のチェックを受けることを強くおすすめします。

特別方式遺言は、通常の遺言方式(自筆・公正証書など)が使えない緊急時や特殊な状況で認められる遺言の方法です。民法第976条〜第984条に規定されており、一時的な例外措置としての遺言方式と考えられます。

🆘 特別方式遺言の種類と作成方法

① 危急時遺言(民法第976条)

✅ 対象者

  • 死亡の危険が迫っている人(病気・事故など)
  • 通常の方式で遺言を作成する時間的余裕がない場合

✅ 作成方法

  • 証人3人以上の立会いのもとで口頭で遺言
  • 証人の1人が筆記し、署名・押印
  • 遺言者が内容を確認し、署名できる場合は署名する

✅ 有効化の条件

  • 20日以内に家庭裁判所で「遺言の確認」手続きが必要
  • これを怠ると無効になります

② 船舶隔絶地遺言(民法第978条〜第980条)

✅ 対象者

  • 船舶内や交通が遮断された地域にいる人
  • 通常の方式で遺言ができない状況

✅ 作成方法

  • 船長や警察官など、特定の公務員の立会いのもとで作成
  • 証人2人以上が必要
  • 書面で作成し、署名・押印

✅ 有効化の条件

  • 危急時遺言と同様、家庭裁判所での確認が必要

③ 一般隔絶地遺言(民法第981条)

  • 交通が遮断された地域にいる人が、市町村長などの立会いで遺言を作成
  • 証人2人以上が必要
  • 書面で作成し、署名・押印
  • 家庭裁判所の確認が必要

📝 注意点

  • 特別方式遺言は一時的な措置であり、状況が改善すれば普通方式で作り直すことが望ましいです。
  • 有効性を保つには、家庭裁判所での確認手続きが必須です。
  • 証人の資格制限(未成年者・推定相続人など)は普通方式と同様に適用されます。

特別方式遺言は、命に関わる場面や孤立した状況での「最後の意思表示」を守るための制度です。もしご家族やご自身が緊急時に備えておきたい場合は、事前に普通方式で遺言を作成しておくことが最も安全です。

無料メール相談実施中

メールにてご相談承ります。
どんな些細なことでも構いません。どうぞ、お気軽にご利用くださいませ。